2000年3月13日
日本鋼管株式会社
代表取締役社長 下垣内洋一様
日暮里富士見坂を守る会 (代表/小川幸男)
拝啓 貴社にはますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
私どもは、東京に唯一残った富士山の全景が望める富士見坂 (荒川区西日暮里3丁目7〜8の境) の眺望を、次代に伝えるために活動をしております。すでに資料をご送付し、面会を申し入れておりますが、御返事がないため、本日改めてお願いにあがりました。
現在、貴社の子会社である日本鋼管不動産(株)が本駒込に建設中の建物が、日暮里富士見坂からの富士山の眺望を阻害する事態になっております。
富士山は江戸以前より信仰の対象でした。昭和40年頃までは23区内でも比較的多くの所で、地上から富士山を眺望することが出来ましたが、その後、次々と富士山の眺望場所は消滅してしまいました。そしてとうとう、かつての江戸市内で、地面に立って富士山を眺望できるのは、日暮里富士見坂が最後の場所になっています。
その唯一残された眺望を遮る形で、マンションの建設工事が行われています。この建物は文京区本駒込3丁目1-1、敷地242u、13階建て(38.43m)のワンルーム分譲マンションで、現在7階まで鉄骨が立ち上がり、その様子は新聞・TV・ラジオ・雑誌を通じて何度となく報道され、多くの市民の注目を浴びています。
日暮里富士見坂の眺望は、研究者によって詳しく調査報告書がまとめられており、本郷通り沿いでは9階までの建物ならば富士山の眺望の保全が可能です。
私どもでは昨年末より、日本鋼管不動産に、9階への高さの変更を重ねてお願いしてまいりました。しかし、今日に至るまで意志決定の権限のある社長および役員各位への面会は実現しておりません。また、計画の変更は販売価格に変更料を加えた損失金の支払い (4億5千万円)、或いはビルの購入 (12億円) 以外には考えられないとの御返事を、担当部長より伝えられました。これは4億5千万円 (或いは12億円) で、「富士見坂の眺望」をお売りになることと理解していますが、残念ながらこの金額は私どもの手に負えるものではありません。
奇跡的に残された日暮里富士見坂からの富士山の眺望を保全し、未来に伝えることは、貴重な風景遺産を後世に残すことにほかなりません。
貴社の環境事業へのご尽力、フィランソロピー、メセナに対する活動はマスコミの報道やホームページなどでうかがっております。さらに一歩すすめて富士見坂の眺望を保全されたならば、その広告宣伝効果ははかり知れません。どうか今回の問題について、ご理解と賢明なご判断をお願いいたします。
荒川区では「富士見坂の眺望を保全する陳情書」が議会採択され、東京都ならびに各関係機関への働き掛けが始まりました。また西川太一郎衆議院議員をはじめ、鈴木貫太郎、藤沢志光、服部ゆくおの各都議、荒川・文京・台東の区議も、超党派で支援してくださっています。
とりあえず9階で工事を中断し、ともに解決策を見いだすための時間を与えてくださいますようお願い申し上げます。
以上のような事情をご理解いただき、貴殿と直接お話できる機会を設けてください。その折りには荒川区長、助役も同席を希望しております。どうかこの問題を先送りされることがありませんよう、重ねてお願い申し上げます。
なお3月14日の朝に、貴社本社前にて要請行動を計画しております。その折に、面会の日時を指定していただければ幸いです。
日暮里富士見坂を守る会
「要望書など」のページに戻る。