平成12年2月13日
日本鋼管不動産株式会社
代表取締役 池田雄一様
日暮里富士見坂を守る会
代表 小川幸男
日暮里富土見坂の眺望保全のお願い
拝啓 早春の候、貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
このたぴは、日暮里富士見坂の眺望を守る私どもの活動に、
ご多忙にもかかわらずお時間を割いていただき誠にありがとうございます。
さて、企業の目的は利益の追求と共に、社会貢献を図ることにあり、21世紀に向かって、ますますその役割は強まっていると認識しております。このたぴの貴社との話し合いに多くの市民が関心を寄せているのは、その現れであると考えられます。
東京と富士山のつながりをこの細い眺望軸で未来にわたってつなぎ止めておくことは、来年から始まる新世紀が、金銭的な短期的利益にもまして、金銭におきかえられない質の高い価値を大切にする社会への先鞭をつけることになると考えます。ご承知かとは存じますが、白山通り以遠の眺望軸内は一般のマンションが建設されたくらいでは、富士山の眺望にとって影響はありません。問題はそれよりも近傍の眺望軸内であり、ここで建築確認申請の事前調整を行えば、富士見坂からの富士山眺望は永久に保全される可能性が極めで高いのです。
今回の問題をどうぞ先送りしないでください。貴社のマンション建設によって、日暮里富土見坂は他の富士見坂と同様、ピル群に埋没し、眺望景観を復元するのは非常に困難になってしまいます。多くの市民に感動を与えている日暮里富士見坂の眺望を阻害しない開発が、今後の開発の範となっていくことも含め、最後の稀少価値の保全のため、ご英断を心からお願い申し上げます。
確かに本プロジェクトで確保したはずの利益を失うことは、社内的にはダメ一ジが大きいことと思います。しかしこの細い眺望軸を、ここで切断することは、後世に伝えるべき貴重な風景遺産を失うことであり、その影響は計り知れません。逆に富士山と東京の架け橋を保全する側に与することは、必ずや貴社のまちづくり活動(マンション建設、その他、保険、観光サービス等)にとっても、将来、好結果をもたらすものと確信しています。なぜなら、まちづくりや情報に関わる企業活動も、企業イメージの果たす役割が大きく、富士見坂眺望の保全の先鞭をつける貴社が、今後その貢献をもとに企業の活動方針を再構築して臨めぱ、社会的な支持を得られるのは理の当然と考えるからです。
このような状況をご理解いただき、協調して私ども市民と貴社が眺望の保全に向けて努力を積み重ねていければと願っております。私どもも貴社へのご迷惑を少しでも少なくしたいと、行政への働きかけを強めるなど、努力しているところです。つきましては、本プロジェクトを9階まで下げた場合の損失額の明細書を至急ご提示いただいた上で、更に話し合いを続けさせていただきたく存じます。ぜひとも誠意あるご回答をお願い致します。
以上のような実情をご拝察いただき、貴社の賢明なるご判断を仰ぐ次第です。 敬具
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